生きる歓び -おぶちゃ7周年記念公演『Joie!』観劇感想

好きな役者さんが舞台のド真ん中で、文字通り全身全霊、いのちを懸けて力の限り「生」を叫ぶ。そんな光景を目に焼き付けることができる今この瞬間、いのちの輝きを浴びられることこそが「生きる歓び」なのではないだろうか。

 

橋本真一さんと石渡真修くんのツイート内容や、劇団さんが開演前から何度も座談会などを開いて作品を知ってもらう機会をつくっている様子からなんとなく感じ入るものがあり、これは観に行った方がいいなと思い観劇予定を入れた。

 

https://ofcha.biz/Joie2024

 

お花いっぱいのキービジュアル。現代を生きる兄妹の物語。

 

閉店パーティー会場に来たかのような気にさせてくれる物語の導入がとても素敵で、アッ、これは良い舞台だ!と確信した。

 

閉店パーティー前、後、両親の若い頃などトータルで二世代分の物語の断片をパラパラと見せてもらうような構成だったので序盤は少し混乱したが、物語が進むにつれて点と点のつながりが見えてきて、その興奮が物語のピークと比例していて、よくよく考えてつくられた構成なんだなと感じた。

(この順番で見せる意味は……?)と考えながら見ていたので、意味があったことに気付いたときは心の中で創り手に握手を求めに行った。

 

観劇しながら涙を流すことはたびたびあるが、涙が溢れて止まらず、口から漏れる嗚咽を我慢するために手のひらに爪を食い込ませてもなお堪えきれず肩が震えてしまう、そんな泣き方をする作品はあまり多くはない。Joie!はびっくりするくらい泣いた。泣くだろうなと思ってはいたが思っていた3倍は泣いたし、それも想像していたような悲痛な涙ではなく心が震えた際に溢れる明るい光に満ちた涙だった。

 

特定の誰かに共感するというよりはパーティーに呼ばれた友人くらいの気持ちで見ていたけれど、個人的にちょっとした事情で兄を心配していた時期があるので終盤のあゆみの心情には過去の自分を重ねてしまい妹の気持ちでオエオエ泣いた。

 

人の生き死にを扱った作品をどう終わらせるか。難しい問題だと思うけど、この作品はとても誠実かつ作品の本質を描いた結末だったと思う。

 

橋本真一さんの人となりを少しでも知っている人は見た方が良い、と友人が言っていたが本当にそう思う。あと、石渡真修くんがめちゃくちゃ良い義理の弟を演じているのでぜひ見てほしい。先行予約期間は終了してしまったけれどBlu-rayの発売が決定している。わざわざ先行予約と書かれているからには通常販売もあると期待したい。私は予約しました。

 

友人と約束なんてしていなかったのに花を贈り合い*1、お花の香りがあふれるロビーに出迎えられて、そのロビーには愉快な顔嵌めパネル*2があり、そのパネルで楽しそうに写真撮影するご夫婦がいたりして、千穐楽ではスタオベ後に役者観客みんなで手を叩きながら歌を歌って、主宰の大部さ…登場キャラクターのサプリンさんが舞台上で「こんなのヒップホップだよ!」と嬉しそうに声を上げていたのが印象的だった。

 

私はヒップホップのことは全然わからないけれど、この光景がヒップホップそのものだと言うのなら、きっとヒップホップはとても素敵なものなんだろうなと思った。

 

観劇後の帰り道の心情をサプリンさんの言葉になぞらえて語るなら

「こんなのJoie!だよ!」

 

I'm glad to meet you.

素敵な作品に出逢えて嬉しかったです。

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*1:花を贈る側の人になりたかったのだけれど友人の方が一枚上手だった。大変に嬉しかった。お花をもらうって嬉しいんですね。

*2:作中に出てくる不思議なキャラクター「サプリン」のパネルがロビーに飾られていた。画像参照。