前回記事はこちら↓
乗車区間
ミッション
大冒険に出る前にまずは日帰りできる範囲で予行練習をしようという、我ながらド堅実なプランである。ただ、ミッションを掲げた動機が「米原駅から北陸本線に乗ること」で行き先が定まっていなかったため、「鉄道関連施設に行く」というサブミッションを加えた。タイミング良く福井県立歴史博物館で北陸本線の写真展示をやっているとの情報を得たので、その近辺を行き先として定めることにした。
旅の始まりはゼロキロポストから
なぜ米原駅からスタートするのか。それは、歴史的には米原駅が北陸本線の起点であり、北陸本線のゼロキロポストがある駅だからである。*1*2
北陸本線と信越本線を巡る旅を北陸本線のゼロキロポストがある駅から始めるという、なんともロマンあふれるスタート。だが、18きっぷの利用開始の意である日付スタンプを米原駅で押してもらうためには、米原駅まで18きっぷを使わずに移動する必要がある。なので、18きっぷを使うために地元から米原までの区間を通常運賃で移動することにした。(?)ちなみにこのおかしな業は、このあとたびたび使用することになる。(???)
そんなこんなで早起きをして、18きっぷを使わずに米原駅へ到着。
米原駅自体は新幹線に乗っているときに何度も遠目で見ていたし、なんなら昨年18きっぷを利用した際にも下車したはずなのだが、鉄道(在来線)への興味関心が高まった状態で実際に在来線のホームに降り立ってみると、たくさんの路線と長いホームに大興奮。下車して早々駅名標の前で撮影大会を始めたり、見慣れない車両の写真を撮ったり、入線する車両を動画で撮ったり、米原駅近辺の施設で保存されているレアな車両を遠目で見たりと大忙し。時間が足りないと判断して予定していた電車に乗らずしっかりめに米原駅を堪能することにした。
ちなみに保存車両についてはこちらが詳しいです↓
そして、一大ミッション「ゼロキロポスト探し」。
ゼロ。つまりは、存在の始まりの地点。素朴な佇まいにときめきを覚え、さまざまなアングルで撮影したり、ほくりく本線*3のブロマイドと2ショットで撮影したり、愛おしすぎて動画も撮った。
そしてこれも大事なミッション。一度改札を出て、18きっぷを有人改札で掲示。
「使い始めです!」「1回目ですね。おひとりですか?」「はい!」
押し間違いを防ぐためか、駅員さんに回数と人数を確認される。目当ての米原駅の日付スタンプを押してもらい、やっとここから18きっぷの旅がスタート。
余呉湖を眺めながら
当初の予定では米原から敦賀まで1本で移動する予定だったものの、米原が楽しすぎて予定していた電車を見送ったため近江塩津行の電車に乗ってそこから敦賀行に乗り換えることに。
米原から近江塩津へは、琵琶湖の北東あたりを走る模様。進行方向向かって左側の座席に座ると、琵琶湖の右上にちょこっとある湖「余呉湖」の風景が見られる。
同じ車両にガチなカメラを持った方がいたので、その方がカメラを構えると(もうすぐ絶景が見えるのかしら……)とそわそわしていた。余呉湖は知る人ぞ知る絶景スポットである。
よく晴れた夏空、湖、青々とした田んぼの風景をぼんやりとただただ見つめる。その時間にとても癒された。やっと鉄旅に出られたことと、観劇関連以外の外出がかなり久しぶりだったこともあり、普段とは違う心の筋肉を使っている……というか、心の筋肉をほぐしている感覚があった。
海道・あぢかまの宿
終着駅の近江塩津駅に到着。駅名は聞いたことある程度の事前知識だったが、とても風情のある面白い駅だった。
駅舎の外観はこんな感じ↓
窓口に、明らかに近隣住民であろうおばさまが家庭的なエプロンをつけて座っていたのが印象的だった。*4
初めまして敦賀
こんにちは!こんにちは敦賀駅!!!
ゆっくり堪能したいところだが、敦賀近辺は別日でがっつり日程を抑えていたため、とりあえず駅名標など最低限のスポットで写真を撮って昼食のためにいったん駅の外へ。
実はこの日、大事な舞台のチケットの一般発売日だったのでどこかに腰を落ち着けてスマホに集中する必要があった。そして愚かな私は昼前時点でスマホの充電をガッツリ減らしていたため、充電できる場所を確保する必要もあった。
結果として、ご当地感のあるものを食しつつ充電もできたのだがチケットは取れなかった。三兎追って二兎は得たのでまあ良しとする。
とりあえず見るもの聞くもの大体スマホに記録して移動する駆け足スタイルで、昼食込みで1時間半ほどの滞在。ワンマン運転の車両に乗り込んでいざ福井駅へ。
博物館で鉄道の歴史を学ぶ
敦賀での滞在時間を削ってでもなるはやで福井駅に移動したかった。なぜなら、今夏の北陸・信越大冒険の旅のなかで福井駅近辺をしっかりと探索できるのはこの日だけだったからである。
足早に駅前のバス乗り場へ移動してバスに乗り、まず向かったのは福井県立歴史博物館。目的は、北陸本線の写真展示である。
ちなみに入館料は一般100円。驚きのお値段である。*5
1階エントランス横のスペースで展示されており、大ボリュームというよりかはちょっとした個展に近い雰囲気だった。
どれも丁寧に額縁に入れられており、撮影OKだったとはいえ映り込みが激しかったので多くは載せられないが、展示されていた写真はタイトル通り「思い出の北陸本線」という感じで、今と昔の違いがわかる駅近辺の空撮や歴代の車両たち、積雪による運休時の張り紙の様子、大雪時の駅構内の様子、北陸トンネル開通を祝う様子、明治期の敦賀停車場の風景などが展示されていた。人の営みと技術の進歩とともに歴史を重ねている様子が見て取れる企画展示だった。
スムーズに移動できたのと、想定していたよりもコンパクトな展示だったため、時間が余ったら行こうと思っていた福井市立郷土歴史博物館にも立ち寄ることに。
こちらでは『まぼろしの鉄道 -東北鉄道と明治の福井-』という展示が行われているとのこと。福井県立歴史博物館の近くに何かないかな〜と探していたときに見つけてHPを確認して知り得た情報だ。
この展示が本当〜〜〜に良かった。いくつかある展示室のうち、松平家史料展示室というところで展示されており
松平家史料展示室
福井藩主越前松平家に伝来した什宝・文書などを展示し、大名家のくらしや文化、福井藩の歴史を紹介します。(約150㎡)*6
とのことで、展示されていた資料も文書がメインで個人的には馴染みやすい媒体で鉄道の歴史に触れることができてとても良かった。
とはいえ建物全体含めいろいろなものが珍しく、他のギャラリーや常設展*7も軽く眺めたりしたため、ひとつひとつ詳細に読み込めたわけではない。が、鉄道と政治と利権問題は切っても切れない関係なんだなあ……ということは読み取れた。また、筆まめな松平慶永(春嶽)氏の手帳に挟まっていたという明治頃の新橋(汐留)横浜(桜木町)間の鉄道の時刻表が展示されていたのも興味深かった。*8
写真撮影はできなかったものの、展示解説シートや目録HPからも閲覧できるので興味のある方はぜひ。
くつろぎの空間
福井市立郷土歴史博物館に入館する際に、隣接する庭園へ入園するか否かを尋ねられた。どうやら隣にお庭があるらしい。平常展示220円、お庭の入園料つき350円という驚きのお値段だったためお庭も見ていくことにした。福井、すごい。
お庭というのは、養浩館というらしい。無知で恐縮だが、平たくいえば当時のお偉いさん(松平家)の別荘を復元した建物だそう。*9
ここがまあ〜〜〜居心地が良くて素晴らしかった。
今、私は、こういう場所で過ごすひとときを欲していた……!!!
感動のあまりお屋敷の床に座り込んで、数分間ただただ何も考えずぼうっとしてしまった。
建築に明るいわけではないのでうまく言葉にできないが、蒸し風呂的な御湯殿(おゆどの)があったり、華美過ぎず地味過ぎない絶妙な塩梅の細工が施されていたり、月見に適した御月見ノ間なる部屋があったりと「良いご身分の方がゆっくり過ごすために造った」と感じる空間だった。お庭も広くて色々と趣向が凝らされていたのだが、庭園にも明るくない私は「良かった」以上の感想が書けそうにない。気になる方はぜひ調べるなり行ってみるなりしていただきたい。
のんびり見て回っていたら、奥の方に座っていた地域住民らしき方が声をかけてくださり、たまたまそこに居合わせたおじさまと一緒に建物の由来や福井の歴史について教えていただいた。なんでも、ここの建物は発掘された遺構の上に建造物を直接建築するという珍しい手法をとっているから、当時のお偉いさんと同じ目線の高さで月が見られるのだとか。秋には実際にお月見できるイベントもあるのだそう。
観光気分の余韻に浸ったまま駅まで徒歩10分程度の道のりを歩いて移動。目をつけていた駅近のごはん屋さんで福井の名物セットをいただき、炎天下のなか歩き倒した身体を癒すことができた。*10
初心者にはまだ早い
初回ながらも大成功だったのでは!?と浮き足立ったテンションで予定通りの電車に乗り込んだが、その帰路の道中で気付いたことがあった。
初心者にはまだ早い、というのは北陸本線の上りと下りの話である。
北陸本線の路線図を眺めるようになってから気付いた、敦賀駅の手前にある謎のループ区間「鳩原ループ線」。電車に乗っている間はどう感じるんだろう?と思い往路でGoogleマップを見ていたのだが、なんとループのところをガン無視して直進。GPSの精度が甘かったのか……?と思いつつよくわからないまま下車した。
そのことを復路の車中で思い出し改めて調べたところ、どうやら上りと下りで異なる線路を走っており、気になっていたループの箇所は上り(敦賀→新疋田)のときしか通らないらしい、ということを知った。
む、む、むずかし~~~!
時すでに遅し。新疋田を通り過ぎていたため次回以降にリベンジすることにした。
リベンジ案件はもうひとつある。『青春鉄道』のとあるエピソードで出てきた某懐かしの缶コーヒーの撮影である。小道具として空き缶を持って行ったものの出番がなかった。近くの席に座っていた人が缶チューハイを窓際に置いたのを見かけて思い出し、とりあえず車内で撮影してみたものの、何?という雰囲気満載である。
なんか、いい感じの場所で、いい感じに撮れたらいいなと思い鞄にしまった。
往路では滋賀あたりで「旅に出た感ある~」と思っていたが、復路では「滋賀なんてほぼ地元よ」くらいの気持ちになっていた。長距離移動すると距離感バグが起こる。鉄旅ってすごい。無事に地元まで辿り着いたところで①福井編、完。
次回は、②碓氷峠編です。
*1:ゼロキロポストについてはこちら:距離標 - Wikipedia
*2:現在の鉄道要覧的には北陸本線の起点は金沢、終点は米原だそう。色々難しいですね。北陸本線 - Wikipedia
*3:実際の路線ではなく青春鉄道のキャラクターの方。ややこしいのでこの記事ではキャラのことはひらがな表記で統一することにする
*4:Wikipedia曰く簡易委託駅というそうで……。世の中には知らない制度がたくさんあるものである。近江塩津駅 - Wikipedia
*5:特別展料金は別。それはそう。ただ今回のお目当ては特別展扱いではなかったので100円で見ることができた。福井県、すごい。
*6:http://www.history.museum.city.fukui.fukui.jp/tenji/index.html
*7:大変に広い施設で、郷土歴史の名の通り縄文時代から近現代までの福井の歴史を網羅した多種多様な展示があり、ただ歩くだけでもそれなりに時間がかかった。福井市、すごい。
*8:余談だが、間に挟まっていたという事実も資料そのものもきちんと残しているあたりが郷土史だなあと感じた。考え方次第では、挟まっていたという事実も含めて不要なものとして処分されかねない。
*10:本当はご当地的なお酒も飲みたかったが、当日中に3〜4時間かけて乗換を一度もミスらず帰らなければならないという使命があったため断念。また、グルメにまで触れ始めると書き終わらないので鉄分以外のこぼれ話は最後に番外編的な形でまとめられたらと思う。